「乳がん検診って、何歳から受ければいいんですか?」「毎年受けた方がいいの?」——診察室や検診の場面でとても多く聞かれる質問です。

結論から言うと、40歳から、2年に1回のマンモグラフィー検診が日本の現在の標準です。ただし、これには理由があり、また年代によって考え方が変わる部分もあります。

この記事では、乳がん検診の開始年齢・頻度・年代別の考え方を整理します。


1. 国が推奨する乳がん検診(対策型検診)

厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」では、以下が標準です。

項目 内容
対象年齢 40歳以上
検診間隔 2年に1回
検査方法 マンモグラフィー
視触診 推奨しない(2016年の改正で削除)

これは「死亡率減少効果が科学的に証明されている」検診方法として国が推奨するものです。市区町村で行われる乳がん検診はこの指針に基づいています。

参考情報源:厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html


2. なぜ40歳からなのか

40歳未満では、以下の理由から対策型検診の対象外となっています。

① 罹患率が低い

40歳未満の乳がん罹患率は40〜50代に比べて低く、検診のメリット(早期発見)よりデメリット(被ばく・偽陽性)の方が大きいと判断されています。

② 高濃度乳房が多い

若い世代は乳腺が発達しているため、マンモグラフィーでがんが見つかりにくい「高濃度乳房」の割合が高くなります。

③ 偽陽性が増える

若い世代は良性の腫瘤(線維腺腫など)が多く、要精密検査となっても実際にがんが見つからないケースが多くなります。


3. なぜ「2年に1回」なのか

毎年検診を受けたい方も多いですが、2年に1回が国の推奨です。理由は以下の通りです。

  • 1年に1回と2年に1回で、死亡率減少効果に明らかな差は示されていない
  • 検査による被ばくの累積を抑える
  • 偽陽性による精神的・身体的負担を減らす

ただし、任意検診として毎年受けることは可能です。心配な方や、自分のお金で受ける場合は、年1回のペースでも問題ありません。


4. 年代別の考え方

30代まで

  • 対策型検診の対象外
  • 症状(しこり・痛み・分泌物など)があれば医療機関を受診
  • 家族歴がある方は医師に相談(後述)

40〜69歳

  • 対策型検診の中心年齢層
  • 自治体の検診を活用
  • 2年に1回のマンモグラフィーが基本
  • 高濃度乳房と判定された方は超音波の併用も検討

70歳以上

  • 検診の利益・不利益のバランスを考える年代
  • 一般に74歳までは検診継続を推奨する施設が多い
  • 75歳以上は個別判断(既往疾患・健康状態を考慮)

5. 家族歴がある場合の特例

血縁者(母・姉妹・娘)に乳がんの方がいる場合、リスクが高い可能性があります。特に以下に該当する方は、早めの検診開始を医師と相談してください。

  • 母や姉妹に乳がんの方がいる
  • 若年(50歳未満)で発症した家族がいる
  • 卵巣がんの家族歴がある
  • 男性乳がんの家族がいる
  • BRCA遺伝子変異が判明している家族がいる

これらの場合、30代からの検診や、より頻繁な検診(年1回)が考慮されます。乳腺専門医に相談してください。


6. 「ブレスト・アウェアネス」を日常生活に

検診と検診の間の期間(最大2年間)には、自分の乳房に関心を持って暮らす習慣(ブレスト・アウェアネス)が大切です。

具体的には:

  • 月1回程度、自分で乳房を触ってみる
  • 大きさ・形・皮膚の状態に注意する
  • しこり・くぼみ・分泌物などに気づいたらすぐに受診

「次の検診まで待つ」ではなく、異変があればすぐに医療機関へ——これが検診と並んで重要なメッセージです。

参考情報源:厚生労働行政推進調査事業費補助金 がん対策推進総合研究事業「乳がん検診の適切な情報提供に関する研究」令和2年度 総括・分担研究報告書(研究代表者:笠原善郎、2021年5月)(https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/download_pdf/2020/202008002A.pdf


7. 検診を受けるタイミング

月経のある方は、月経終了後の1週間以内が乳房の張りが少なく検査しやすいタイミングです。ただし、絶対ではないので、自治体検診の日程に合わせて受けて問題ありません。


まとめ

  • 国の標準は40歳から、2年に1回、マンモグラフィー検診
  • 30代以下は対策型検診の対象外(症状があれば受診)
  • 70代後半以降は個別判断
  • 家族歴がある方は早めの検診を相談
  • 検診の合間はブレスト・アウェアネスで日常的に意識する

「いつから・どのくらい」を知ることで、不安な毎月の検診を強迫的に受けるのではなく、適切な頻度で受け続ける——それが乳がんと長く付き合う最善の方法です。


筆者:田舎の県庁所在地に住む医師。外科学会専門医・乳癌学会認定医。現在は乳がんの検診・診断と緩和ケアを専門に担当。医師になって20年。